微胞子虫脳炎(エンセファリトゾーン)

<原因>

 微胞子虫類科の原生動物(単細胞)はヒトも含めて、多くの動物種属への寄生が可能である。ヒトへの寄生は稀であるが、いわゆるエイズのような免疫不全患者や、熱帯特有の疾患患者には寄生可能である。

 ある種属、例えば猫、犬などは、この病原体に犯され死に到るか又は、感染はするが死には到らず、体内から完全に病原体が一掃されるかのいずれかである。

 しかしながら、ウサギやネズミにおいてこの病原体は、一生涯を通じて体内で根強く生存し、顕著な臨床徴候を示す。あるいは無症状である。そして種属間でさえ、いくつかの遺伝的な菌種は、他のものよりも感染に対して、より抵抗力があるということは明白である。

 微胞子虫脳炎は汚染された尿により感染動物から伝播する。感染経路として、最もよくある行動としては、感染したウサギにより、病原体をもらうということが挙げられる。すなわち、感染力のあるcinniculi胞子を含んだ尿により汚染された食物を口にしたときなどである。

 本病原体胞子は、経口感染の他に吸入感染も起こりうる。肺を介して体内へと侵入するのである。本病原体の出生以前の胎子への胎盤感染が起こりうるか否かは、未だ明らかにされていない。

 仔猫や仔狐における感染率は、本病原体に対し母胎が陽性の時に最も高くなる。飼育環境中に存在するcinniculi胞子は、母胎が感染源となりまき散らされたものなのか、あるいは、母乳や胎盤を介しての感染なのか、いずれにせよ、最終的結論は未だ出ていない。一度、cinniculi胞子が体内へ侵入すると、”アクティブ(活性化)”し、腎臓、肝臓、肺、脊髄、そして脳を含め、あらゆる体内組織の中に伝播していく。

 微胞子虫が腎臓に感染すると、より多くのcinniculi胞子を活発に生じ、それから30日以内に、感染力のある、数多くのcinniculi胞子が尿中に排泄される。このcinniculi胞子は、90日間迄に次の病原体を作り、生産を止め、ウサギはもはや、他に対しての感染は不可能となる。

 微胞子虫脳炎感染は、米国でペットとして飼われているウサギにおいては、大変よく診られるものである。ある地域において、臨床上正常なウサギへ検査を施したところ80パーセント迄は、この疾患においては陽性であった。つまりこれは、他から感染を受け、ペットとして飼われている

 ウサギからこの疾病が他へ伝染するということは、起こり得ないということのみならず、野生のウサギや齧歯類についても、同様に起こり得ないということがいえるのである。

<徴候>

 幸いにも、この病原体に感染したほとんどのウサギは、一生涯を通じ、臨床上において完全に正常のままである。しかしながら、そのうち何匹かは重傷、時には致命的な疾患へと進行するものもある。なぜ、何匹かは臨床徴候を示し、その他のものは疾患が進行しないのかということは不明である。しかしながら、前述したように、その件に関しては、一部は遺伝によるものなのであろうと思われる。そして、免疫不全の動物においては、より高い危険性があるということは明確である。

 ウサギにおける臨床徴候としては、通常は腎臓、脳、あるいは脊髄疾患を伴う。例えば、今現在、重大な腎臓疾患があるとしたら、全身性衰弱は神経学的な問題として、初期段階で誤った判断を受けるという可能性があると思われる。そして、ウサギは衰弱と機能低下に加え、食欲減退を呈し、飲水量、排尿量が増加、呼吸に至るまでアンモニア臭がし、そして最後には、突然、死亡する。

 腎臓疾患はほとんどの場合、血液検査、あるいは時により、腎臓への生検を実施することにより診断される。例えば脳や、脊髄が病原体に感染しているのであれば、臨床徴候は、損傷部位によって異なる。それは下記に述べている中のいずれか1つ、或いは、組み合わせでの、神経症状の疾病経験があると思われる。片側、或いは両側の顔面麻痺、一肢のみの衰弱、両側後肢の衰弱や麻痺、四肢の衰弱や麻痺、前庭疾患(斜頚)、食欲の低下、行動の変化、機能低下、発作(軽症から重症まで)そして、これらの後に、突然、死亡する。

<診断>

 血液検査により、ウサギ体内の微胞子虫脳炎の有無の発見が可能である。そしてまた、病原体に対する抗体を発見することも可能である。この検査は本来、繁殖コロニーや実験室を設定とした動物等の陽性を発見するものである為、これらのウサギ等は除かれなければならない。つまりこの検査は、ペットとして飼われているウサギのみに実施することに限定されているものである。

 理由としては、この病原体は、今現在における臨床上の徴候の原因であることを証明しないためである。他の言葉を借りれば、今まで多くのウサギが、この病原体により危険にさらされ、感染を受けてきたが、この疾患におけるどのような徴候にも、不顕性があるからである。

 つまり、もし、検査が陽性ということは、ウサギの体中に病原体が存在するということを意味し、この病原体は、目下、我々が判断するどんな臨床症状の徴候も、招いてしまうという証明にはならないということである。この病原体が、実際に疾病の徴候を引き起こしている際にただ1つの診断法として挙げられるのは、脳、あるいは脊髄から、生検を取り出すということになるのだろうが、これは危険な作業であると共に、実際には全く役に立たないのである。

 つまり我々は、唯一、脳炎性胞子虫炎の試験的な診断を作り上げることが可能なのであり、この診断は動物がこの病原体の問題を潜在的に抱えていることを、陽性の微胞子虫脳炎検査が呈示する現状に加えて、その他の疾病を排除する事を基本としたものである。

<治療法>

 残念なことなのだが、活性力のある病原体の脳炎性胞子虫炎への(有効な)治療法は、今のところは皆無である。Ivermectinと寄生虫駆除薬のような薬剤は、その成功を収めずに、試されている。
病原体そのものは細胞内部に生存しているため、このように保護された領域へ浸入して薬物療法を施すことは、大変困難を極めるのものである。

 1994年にヨーロッパで発表された研究では、FumagillinとAlbendazole等の薬剤の使用が有効であろうと示唆している。しかしこの薬剤は、米国では入手不可能であり、今までに生体動物へ投与されたことがないのが実状である。たとえ、もし、この薬剤が微胞子虫脳炎感染への使用に支障がないということが明白になったとしても、脳、脊髄あるいは一度病変を引き起こされた肝臓への影響を反転することは、不可能であろう。

 臨床徴候があるウサギには、良い看護を持続させなければならないのである。そして抗生物質、鎮痛剤、そして炎症性の薬剤は、二次的な問題が生じたときに必要に応じて使用し、効力を発揮するものである。

 ペットとして飼われているほとんどのウサギは、おそらく母胎からの垂直感染により感染する。
成熟後購入されたウサギや、繁殖目的で使用されるウサギ等は、cinniculiの胞子を発散するとは、考えにくいのである。しかしながら、母胎から感染したかもしれない4ヶ月齢以下の若齢なウサギは、尿中にその胞子を積極的に排出することが可能であろう。それゆえ屋内飼育されている場合、5ヶ月齢以下のウサギは他のウサギとは隔離するのが、おそらく良いアイデアだと思われる。

 例えば、若齢な仔ウサギが、病原体を媒介するか否かを明白にするのに、この微胞子虫脳炎検査を実施する事は可能であろう。そして、例えば、陰性なら5ヶ月齢より以前に、他のウサギと同居させることが可能である。ところで我々は、ウサギの飼育環境を洗浄し、全てのcinniculi胞子を取り除く最も良い製品を指摘する最終的な要因を、未だ見つけ出すことができていないのである。

 たとえば、木やカーペットのような尿で汚染されたいかなる物質でも、徹底的な洗浄は無理であるし、そのようなものは、cinniculi胞子を駆除する方が良いということになる。他の物質としては、プラスチックや金属等があるが、殺菌性のあるフェノールか(1つの例としてLysolが挙げられる)、あるいは強い漂白溶液で擦り、完全にすすぐこと等が挙げられるのである。