本当にサルがほしいの?

シミアン・ソサイエティ・オブ・アメリカ (the Simian Society of America, Inc.) 発行
パット・ブルックス著の文章から引用。
(訳注: Simian=シミアンとはサルや類人猿を意味する)

 活発で、頭もよく、神秘的な「人」、すなわちサルは地球に存在するもっとも魅力的な動物の仲間といえます。それゆえサルは素晴らしいペットになると思われるようです。しかし、犬や猫とは異なり、霊長類(すべての猿、ゴリラ、チンパンジー、オランウータンなど)はこの数千年の間、人と共存できるようには進化していません。サルは愛玩動物ではありません。野生の動物です。親類にあたるとはいえ、まったく異なる人間の世界には適応できません。霊長類を人工飼育下で健全に維持するのは容易ではなく、費用も時間も必要です。サルをペットにと考えている人は、以下のことを考えてみてください。

Q. 野生動物と暮す覚悟はできていますか?

 サルが野生動物であることを常に胆に命じてください。アライグマと同様、子供の頃のかわいらしさは成獣になるとともになくなり、攻撃的になります。ちょっとした挑発でも襲ってくることがあります。テレビなどで一般に見かけるサルは若く、成獣を檻の外で見かけることはめったにありません。幼獣のときから人工飼育をしても、このような行動の変化は変わりません。むしろ、幼獣をその母親や群れから引き離すと、生涯にわたって神経過敏な行動をとるようになることもあります

Q. 室内の汚さに対応できますか?

 サルを飼っている家には共通点が見られます。壊れたランプに食器、引き裂かれたカーテン、ほじくり返された観葉植物、そして言うまでもなく明らかな異臭を放っています。サルが檻から出ている間は、一瞬も目を離すことはできません。一番小さなリスザルでさえも、あっという間に食器棚を開けて粉や砂糖、液体などを容器からこぼしてしまいます。大きなサルなら、冷蔵庫を開け、水道の蛇口をひねり、窓のスクリーンを引き裂き、屋外に通じるドアの鍵を開け、椅子、机、ステレオ、テレビなどもひっくり返します。毒性のある物質や薬は、鍵をして保管しておかなければなりません。

 サルの尿、糞、下痢などを始末するのがいやなら、サルは飼わないことです。つまり、1年365日、(少なくとも)毎日、掃除と消毒をしなければならないということです。サルは刺激を受けやすい動物です。興奮すれば、いつでも、どこでもすぐに「おもらし」してしまいます。しつけも簡単にできません。幼獣ならオムツやトイレのトレーニングも不可能ではありませんが、一旦、成長してしまうと子どもの頃のトレーニングは忘れるか、無視します。

Q. サルの飼育は、あなたの住んでいるところでは合法ですか?

 居住地区の法律を取り扱う局(動物管理局、衛生局など)に連絡をとり、一個人が人間以外の霊長類を飼育する場合の規制などを確認してください。市や州によって一部あるいはすべての霊長類の飼育を禁止しています。特別許可があれば飼育を許可しているところもあります。サルを飼ってしまってから、市や州の法律に違反していることを知っても手おくれです。

Q.サルが成長したらどうなるのか?

 幼いサルは、他の動物同様、かわいらしくて、いとおしいものです。これが一旦、性的成熟を迎えると、まったく別人のように豹変するということを覚悟しておいてください。加齢とともに、すべてのサルは気性が荒くなります。飼い主はサルの機嫌に全神経をとがらせていなければなりません。霊長類は飼い主をも、何の予告も無しに突然襲い掛かることがあるからです。人間のように、サルは各個体独特の人格を持っています。知らない者や子どもを信用しないもの、同じ家族の中で突然、これまでとは違う者に従い始めるものなど様々です。

 子どものサルを着せ替え人形のようにしてしまうのは、とても抵抗し難いことのようです。ですがこれも、成長とともにたいていの霊長類は洋服を帰せられるのを嫌がります。子どもの代わりとして買われたサルは、その期待通りにならなくなるとすぐに飼育放棄されてしまいます。

 サルに芸を教え込むのは、プロの調教師でもない限り、不可能です。プロの調教師でさえも、サルが一旦性的成熟に達すると、危険を回避するために別の個体に替えます(通常、4歳で性的に成熟します)。サルは本能的に開けっぴろげな動物です。たとえば、性器を見せつけたり、マスタベーションや交尾をしたり、同性同士で乗り合ったりと、飼い主を赤面させるような行動をします。

Q. 攻撃性 −鋭い歯 − に対処できますか?

 誰が何と言おうと、サルは噛みます。噛むことは、霊長類の怒りの表現であり、どんな努力もこれを変えることはできません。罰は脅しと解釈され、深刻な結果を招きかねません。よくいわれる去勢や避妊も、意外とこの攻撃性を抑制するにはまったく、あるいはほとんど効果がありません。抜歯は危険で残酷なだけではありません。歯のないサルでも、噛めばかなりの傷を負わすことになります。

 サルと人間、双方の安全のために、霊長類は誰とも接することのないようにしておくことです。友人、子ども、隣人、親戚などすべてです。州の衛生局は、通常、人を噛んだサルは狂犬病のテストを行なうために殺してしまいます。噛まれた人は訴えることができるため、飼い主は責任保険に加入しておくべきです。あなた自信と家族も必ず保険に加入してください。成獣に腕をひと噛みされただけでも、数週間は使いものになりません。

Q. これから20〜40年間、健全な飼育環境を提供しつづけられますか?

 飼育管理の行き届いた霊長類の平均寿命は20〜40年です。サルは新しい環境にうまく順応しません − とくに新たにパートナーや子どもを迎えた時には。あなたが現在若いのなら、将来自分が大人になったときサルはどうなるのか考えてみて下さい。大学に通う、離れた町で就職する、軍隊に入るなど、あなたがサルと一緒に暮せなくなったら、いったい誰がサルの面倒をみるのか?成長したサルに新しい引き取り先を見つけるのは簡単なことではありません。 いったん、かわいい赤ちゃんの時期を過ぎてしまったサルは売却の価値を失います。あなたが大人になっても、ライフスタイルが変わっても、サルに対する責任は決してなくならないことを忘れないでください。

Q. 適切な飼育スペースはありますか?

 「大きな」ケージを置くスペースがなければ、サルは飼わないことです。一番小さなサルに最低限必要なケージのサイズは、120cm x 180cm x 180cmです。サルは激しく動き回るのでゆったりとしたスペース(室内外)と小さな閉鎖された寝床が必要です。一般にサルの飼育者は、部屋ごとサルに提供します。心身ともに充分な刺激がなければ、霊長類は鬱、あるいは錯乱状態に陥ります。ぶら下げたタイヤも、よじ登るためのロープも、その他のおもちゃもサルが飽きてしまうと、常に別のものに替えなくてはなりません。

 サルは、暖かく、湿気や隙間風のない飼育環境を必要とします。また、短時間の日光浴を好み、日光からビタミンDを得ています。そのため日陰のある室外/室内ケージが必要です。それができなければ、ビタミンDを経口投与するか、特別な照明を使用してビタミンを補給します。

Q. エサやその他の飼育費用を負担できますか?

  一頭につき週$25を負担できなければ、サルは飼わないことです。サルはピーナッツとバナナだけで生きていけるものではありません。一風変わった食生活を必要とするものもいますが、霊長類は一般にバランスのとれた食生活が必要です。霊長類用の市販のビスケット以外にも新鮮な野菜、果物、ビタミン、生きた虫などを豊富に与えます。

Q. あなたが留守のときは、だれがサルの世話をしますか?

 バケーションをとりたいのなら、サルは飼わないことです。サルは日課と慣れた環境を好みます。旅の友には向いていません。モンキーシッター(給餌、掃除、長時間におよぶ遊び相手)を見つけるのは至難の技です。

 毎日、2、3時間でも一人ぽっちにされると、精神的に苦痛をうけ、異常行動をとるようになることがあります。相手をしてやるには、もう一頭遊び相手を飼うか、小グループの多頭飼いをして互いにコミュニケーションをさせるかを配慮する必要があります。

Q. 霊長類を診てくれる獣医師が近くにいますか?

 霊長類に詳しい獣医師はあまりいません。霊長類おことわりの獣医師もいます。健康診断のためにずいぶん遠くまで車で訪院しなければならないかもしれません。サルを家に連れて帰ってくる前に、きちんとサルを診れる獣医師に一通りの健康診断を必ずしてもらってください。サルは結核、ヘルペス、エボラウイルスなど深刻な病気を保菌している可能性があります。

 サルを本当に飼うか、どうかをよく考えてくださる事を願ってやみません。一頭のサルを生涯しあわせにするために、払わなくてはならない犠牲をあなたは自らすすんで受け入れられますか?もしその覚悟ができているなら、シミアン・ソサイエティ・オブ・アメリカ へ入会してください。サルを飼う前に世話の仕方を直接体験してみてください。

シミアン・ソサイエティ・オブ・アメリカ (THE SIMIAN SOCIETY OF AMERICA)について

 シミアン・ソサイエティ・オブ・アメリカ は霊長類の飼育環境を改善するため、1957年に設立された非営利団体です。会員は個人の飼い主、獣医師、霊長類学者、動物園の職員などで構成されています。同協会は、霊長類の飼育がいかに複雑で多くの問題を抱えているかを理解していない人がサルなどを飼わないように呼びかけています。一方、長期に渡って健全な飼育環境を提供する覚悟ができている人には、健康、食生活、精神面のケア、飼育管理など多岐にわたる情報とともに、経験豊富な霊長類の飼育者ネットワークへのアクセスも提供しています。協会は活動ネットワークを、月間刊行物、ビデオの貸し出し、教育出版物の発行、年二回のコンベンション、各地区の支部などによって維持しています。また、霊長類の保護や引きとり先探しなどを支援しています。このネットワークを通じて、成長し、飼育放棄された霊長類が自然保護区域内や飼育に必要な許可を持つ個人や施設に生活の場を見つけることができました。