人畜共通感染症動物の検疫に関する研究

平成7年度 厚生科学研究
大阪検疫所長  中村信也 et al



検疫所の行う動物の検疫に対する基本釣考え方を次のように提案する

ア.検変法の改正

 検疫法を改正し、米国の検疫法と同様に輸入人畜共通感染症動物の検疫の章を殻けるべきである。貨物検疫の中で行う方式よりは特別な一章を殻けた方がよい。現検疫法になじませるために「人畜共通感染症による病原体の国内侵入防止」として理論立てすべきである。なお、農林水産省動物検疫所の行う家畜動物検疫と混同させぬために“人畜共通感染症動物検疫”“ペット動物検疫’などの新語が必要である。

イ.指定感染症と指定動物

 人畜共通感染症動物の検疫制度を行う場合、いかなる人畜共通感染症が検疫になじむかを考えねばならない。感染症の危険性は致死率と感染力で決まる。検疫の基本は海外からの危険な感染症の蔓延防止という社会防衛の考え方に立っている。従って検疫対象は致死率が高いか、感染力が強い感染症に限定すべきである。更にこれらに該当する感染症で検疫になじむかの検疫適合性をも考え併せねばならない。注目すべき感染症について分析を行うと次のとおりである。

(1) 致死率
高い…………エマージング感染症、狂犬病、Bウイルス症、ペスト、メリオイド症
高くない……オウム病、ブルセラ症、サルモネラ症、細菌性赤痢、レプトスピラ症、結核、猫ひっかき病、アメーバ赤痢、犬猫回虫症、アライグマ回虫症
(2) 感染力
強い…………エマージング感染症、狂犬病、Bウイルス症、ペスト、メリオイド症、結核、オウム病
強くない……ブルセラ症、サルモネラ症、細菌性赤痢、レプトスピラ症、猫ひっかき病、犬猫回虫症、アライグマ回虫症

 検疫の対象は致死宰の高い感染症か、致死宰の高くないが感染力の強い感染症のいずれかとすぺきである。この中でペストとメリオイド症は野生のネズミが主であり、輸入ペット動物として輸入はほとんどないので検疫適合性が低く除外してよいと思われる。次にエマージング感染症の中で感染症を特定化する必要がある。エマージング感染症はウイルス性が主である。最も注目されるウイルス感染症てはウイルス性出血熱である。同病は発熱と出血を主症状とする疾患群であり、幅広く黄熱、テング熱なども含められる。エマージング感染症という意味から古典的ウイルス性出血熟は除外され国際伝染病で指定するラッサ熱、マールブルグ病、エボラ出血無の3感染症が対象に考えられる。この中でラッサ熱はネズミが、人畜共通感染動物であるので前述のように検疫適合性がない。ウイルス性出血熱以外のエマージングウイルス感染症としてクリミヤコンゴー熱、ハンタウイルス症などのブンヤウイルス感染症、アルファウイルス脳炎などがあるがウイルス感染経路が解明されておらず世界的にも輸入動物からの感染報告例がないので現在のところ検疫対象外としてよい。

 以上、指定感染症はエボラ出血熱、マールブルグ病、狂犬病、Bウイルス症、結核、オウム病の6感染症が妥当である。

 次に指定動物について、指定感染症に対応する動物を当然考えねばならないが、検疫所の行う動物検疫はペット動物に絞り込むべきである。エボラ出血熱とマールブルグ病ではサルが対象である。狂犬病について犬のみでは不十分である。米国においては1988年4,724例の動物狂犬病の発生があったが、その内訳をみると、スカンク1,791頭(38%)、アライグマ1,463頭(31%)、コウモリ638匹(13%)、猫192頭(4%)、犬183頭(4%)であった(19)。

 従って対象動物はこれら全てである。Bウィルス症はサルが対象となる。結核についてはサルと鳩を、オウム病についてはオウム、インコ、九官烏を対象とする。

*これは研究の一部を掲載してます。


リスザルの血液データ人間に関係する霊長類(サル)の病気BV/噛まれたら症例写真(1)症例写真(2)