ウサギのウイルス性出血病 (VHD)
<概 要>
兎のウイルス性出血病(VHD)は兎の新しい疾病で、高熱と突然死が特徴とされています。この病気に感染した動物の死亡率は90%-95%とも、100%ともいわれています。主な症状は全身性の充血と出血、血栓の多発です。この病気が1984年、中国江蘇省南部で最初に発見されて以来、企業経営や個人経営の養兎場で兎の大量死が報告されています。1987年以降、この伝染病はアジアやヨーロッパ諸国では別の病名で報告されています。
感染した兎の肝臓の抽出物からのVHDウイルスの分離には既に成功しています。VHDウイルスのビリオンは二十面体で、エンベロープがなく、直径32-34ナノメートルです。ビリオンには直径15-17ナノメートルのコアがあり、そのカプシドは長さ6.5ナノメートル、直径4.5ナノメートルで、中央に直径が2ナノメートルの孔のある管状のカプソメア32個からなっています。32個のカプソメアのうち12個は五量体で、20個は六量30体です(合計180個のサブユニット)。カプシドはおそらく二層構造になっているものと思われます。VHDウイルスは形態的には他のウイルスよりもガルシウイルスに似ています。
VHDウイルスは酸に強く、1モルの塩化マグネシウム水溶液で安定します。エーテルやクロロフォルムの処置には抵抗性を示し、ヒトの赤血球を凝集させる能力があります。この赤血球凝集能はこのウイルスに対する特異抗体で阻止することができます。そこで、VHDの診断には赤血球凝集阻止反応(HIT〉が便われます。
VHDに感受性のある兎に対するVHDに感染した兎の肝組織50%、致死量は1ミリリットルの懸濁液を用いた場合、10^7-10^7.5です。VHDVに対するモノクローナル抗体が分泌する3つのハイブリドーマのクローンが既に開発されています。
塩化セシウム平衡超遠心法を行うと、ウイルスにはふたつのピークがみられます。二つのビークはそれぞれ空つぼのパーティクルとピリオンがいっぱい詰まったパーティクルです。一番目のビークのビリオンは1.28g/ml一1.34g/mlの浮上密度があり、二番目のピークは1.36g/ml一1.44g/mlの浮上密度があります。
精製されたビリオンを構成するポリペプチドをナトリウムドデシル硫酸塩ポリアクリルアミドのゲル電気泳動法によって調べると、分子の大きさが63−64kdの主バンド(VP2)と35−38Kdの副バンド(VPl)がみられました。このふたつのポリペプチドをさらに硝酸セルロースの膜に電気的に転写して快復期の兎や健康な兎の血清で調べたところ、VP2が主要タンパクであることがわかりました。
精製されたVHDVから抽出されたウイルスのゲノムがS1ヌクレアーゼで消化されるということは、VHDVが単鎖(一本鎖)であることを示しています。また、VHDVパーティクルの吸収スペクトルに対するフォルムアルデヒドの結果とアクリジン・オレンジによるVHDVの核酸染色もウイルスのグノムが単鎖(一本鎖)であることを示しました。
電子顕微鏡で調べると、精製されたVHDVから得られたゲノムは全長2.0-2.1マイクロメートルの一本鎖でした。ウイルスのゲノムの分子の大ききは2.4-2.5×108dalであると推定されました。
兎での交差防御、免疫電顕、交差赤血球凝集抑制試験を行っても中国の13の地方から集めた21の系統の兎の間には現在のところ抗原の違いは見られません。-20℃で18カ月間保存してもウイルスはその感染力を失いませんでした。我々はウイルスを全ての組織培養(初代培養細胞と株化培養細胞系)、受精卵、実験動物で継代することに失敗しました。
以上のことから、VHDVはガルシウイルス科の仲間であると結論づけられますが、ウイルスの分類はまだされていません。
我々の研究室で開発したフォルマリンで不活性化した組織の懸濁ワクチンが非常に有効であるということが証明されています。ワクチン接種された兎のほぼ100%が感染防御されます。接種してから3−5日で感染防御能が得られ、その効果は8カ月間持続します。そこで、中日全土でこのワクチンを使用するようになってから、この疾病の予防に非常に功を奏しています。
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