アライグマの全飼い主に対する警告


 アライグマは、Baylisascarisという回虫の自然宿主です。この寄生虫はアライグマには良く見られるもので、アライグマ自身にとっては常寄生虫に過ぎません。問題なのは、感染したアライグマによってこの寄生虫が人間に移り、その幼虫が人体に移行し始めることです。

Q1 幼虫移行とは?
幼虫移行とは、寄生虫の幼虫が人間の器官や組織内に住み着く(移行する)ことです。これは通常、関わった器官系統によって分類されます。脳が関係すると、脳脊椎移行と呼ばれます。アメリカの子供の失明の原因でもっとも一般的なものは、犬や猫のトキソカラ属(Toxocara)幼虫の眼球移行によるものです。
Q2 アライグマ回虫(Baylisacaris procyonis)とは?
これはアライグマの腸にいる回虫の中では普通の大きさのものです。成虫の長さは大体12〜20cmで、犬の回虫と似ています。この寄生虫が人に感染すると脳に移行し、これまで北アメリカで2件の死亡事例が報告されています。これは人間の失明にも関係しています。
Q3 人間への感染ルートは?
人間には、ペットのアライグマ、汚染した環境、汚染土壌、水または感染した手から偶然卵を取り込んでしまうことで感染します。感染したアライグマは毎日無数の卵を排泄します。そしてこれらの卵は、数カ月から数年にわたってその中に生存し続けます。いったん人間の腸の中でその卵が孵化すると、その幼虫は腸壁を通って肝臓に達します。そのあと幼虫は急速に肺に移行し、まもなく脳に到達します。犬のトキソカラ属の回虫と異なり、これらの幼虫は移行しながら300ミクロンから1900ミクロンまで成長します。サイズが大きいため生体組織に機械的な損傷を与えます。最終的に幼虫が住処に達すると、特に宿主の脳に炎症性反応を誘発します。レベルダメージは幼虫の数や関係器官の生命力に左右されます。脳の比較的必須部分ではないところに幼虫が入った場合には、臨床上の兆候を示さない場合があります。
Q4 アライグマによる罹患率は?
罹患率は特殊なアライグマの輸入先の地理的な場所によって異なります。そこでの季節的な変動も一つの要因となるかも知れません。例えば、アメリカのケンタッキー州でテストしたアライグマの26%は陽性反応を示しました。(アライグマはほとんど北アメリカから輸入されています。)アライグマはまた狂犬病の媒介もしますし、私は日本の検疫システムがどのくらい厳しいのか日頃疑問に感じています。
Q5 アライグマが病気にかかることは?
トキソカラ族の回虫が犬や猫に生じる程度と考えていただいて結構です。
Q6 人間の診断・治療は?
Antemorum(生前)テストがアライグマと係わってきた期間、臨床上の所見または血清テストで行われるくらいです。血清テストはこちらで導入されたばかりで、まだ日本にはないと思います。幼虫移行は、眼下検査、白血球増加、好酸球増加で診断されます。ただ、現時点で有効な駆虫治療はありません。

Q7 今後の対策は?

  1. アライグマの寄生虫検査を最低年2回定期的に行う。
  2. アライグマのテストで陽性反応が出たら、即隔離する。
  3. アライグマの糞を捨てる場合、特に衛生面に注意し、檻も頻繁に消毒する。 卵は普通の消毒薬への耐性が強いです。卵の外皮は次亜塩素酸ナトリウム(ブ リーチ漂白剤)で除去できますが、殺すまでにはいたりません。火に当てるのが唯一確実な方法ですが、家庭で行うには難しい面もあります。
  4. 万一の場合、アライグマのペット飼育を諦めることも頭に入れておくべきです。
  5. あなたのかかりつけの医者もこの寄生虫の話しはお聞きになっていないかも知れませんから、医者から教育していくのも一つの案かも知れません。

参考 Journal of american Veterinary Medical association.
"WISCONSIN HOUSE RABBIT NEWS"1994 年夏号より転載