ヒトのサルモネラ症の防止

Avoiding Human Salmonellosis

Margaret A. Wissman, D.V.M., D.A.B.V.P. And Bill Parsons


 近年、ペット爬虫類、特にイグアナから人間に感染するサルモネラ感染症についての報告が増えています。

 The Centers for Disease Control and Prevention(伝染病予防センター)が発行している"Pediatrics"の3月号には、1995年にはイグアナが媒介となるヒトのサルモネラ感染症は、1989年に報じられたケースより増加して67件にのぼっていると報じられています。サルモネラは人畜共通伝染病、つまり動物から人間に移る病気です。

 アメリカ合衆国に輸入されるイグアナの頭数は、1982年には183頭だったものが1994年には569,774頭にまで急増しています。

 健康管理のプロフェッショナルの間での意識が向上したことにより、現在もサルモネラ症に関する報告が相次いでいます。しかし、恐らく多くの場合は自覚症状もなく報告されずに終わっていることでしょう。というのも、サルモネラ症の兆候はありふれたものですし、(特に成人の場合には)病院に行くこともなく治ってしまうと思われるからです。

 人間の場合、サルモネラ症の症状には、激しい腹痛・下痢・赤痢・むかつき・嘔吐・発熱などがあります。サルモネラは、子供が感染すると脳膜炎などの重い症状を引き起こすことがあり、特に乳幼児は脳に膿症を起こすことがあります。サルモネラは、10歳以下の子供や乳幼児、免疫の働きの弱い人は、健康な大人より大きな危険にさらされます。

 サルモネラは細菌のグループで、およそ2000種におよび、5つの亜属に分けられます。ほとんどの脊椎動物はサルモネラ科の細菌に感染します。しかし、宿主や、病気を広める媒介者は多種多様です。定宿性の抗原型を持つものもいますが、S.enteriditisの抗原型は、人間その他の動物に感染するかもしれないと考えられています。

 何らかのサルモネラ(一頭の爬虫類からだいたい5種類の抗原が検出されます)を保有している爬虫類の割合は、試験の結果、83.6〜93.7%と推定されます。

 サルモネラに感染している爬虫類としては、亀・蛇・トカゲ類は最も一般的です。一見健康そうな爬虫類でも、ほとんどはサルモネラ菌をもっていますから、自分自身と家族を感染の危険から守る方法を知っておかねばなりません。

 サルモネラに感染する危険性を、最小限に抑える方法を挙げておきます。
 サルモネラに感染しないようにするには、いくつかのステップがあります。

1.教育

 サルモネラ症を防ぐ第一歩は、その危険性に気付くことです。

 爬虫両生類学者やブリーダーは、様々な爬虫類との接触が一般の人々より多くありますので、その分感染の危険がより大きくなると思われがちですが、そういった人々ほど人畜共通伝染病の危険を意識しているものなので、健康管理や衛生に気を使っているものなのです。

 一方、個人の飼育者は、爬虫類から移される可能性のある人畜共通伝染病に対して、それほど意識していません。ですから、ペットショップの店員や、獣医師、それにブリーダー達が、機会あるごとに一般の人々を教育する事が重要になってきます。

 潜在的な危険性に気付くことが、予防の第一歩なのです。

2.正しい取り扱いと保定(手を洗いましょう!)

 飼育者は、ペットに噛まれたり引っ掻かれたりする危険を最小限に抑えるよう、正しい扱い方を教えられていることと思います。

 子供は、爬虫類にキスをしてはいけないとか、絶対に口に入れてはいけないと理解できないうちは、爬虫類をハンドリングするべきではありません!

 大きな子供には、ペットや、ペットの食器やケージを触った後には、消毒石鹸で手を洗うように教えておきましょう。そして、子供が爬虫類と遊んでいるときは、常に大人がそばで監督するようにして下さい。

3.爬虫類を台所に入れない。

 台所や、その他人間の食品を保存したり食べたりする場所で爬虫類を飼うのは絶対にやめましょう。なぜなら、爬虫類の体内のサルモネラの状態については、研究所の試験はあてにならないからです。爬虫類はすべて健康保菌者として扱うのが一番です。

 ペット爬虫類、特に、おとなしくて部屋に放し飼いにしているグリーンイグアナなどは、窓枠やカーテンレールもふくめて、台所には入れないよう、肝に銘じておいて下さい。

4.爬虫類の飼育用品などを台所や風呂に入れない。

 爬虫類はサルモネラを保菌しているかも知れないので、絶対に台所のシンクで泳いだり水浴びをしたりさせてはいけません。(人間用の湯船も同様です。)

 飼育用品を台所で洗ったり、水容器をシンクに置きっぱなしにするのは、非常に悪い習慣です。ゴミはトイレに流すか、2重のゴミ袋に入れるようにしましょう。

5.手袋や防護マスクの着用

 ケージの掃除をしたり、排泄物や、使用済みの床材を触るときには、防護用の手袋を着用しましょう。これは、サルモネラを含めた潜在的な病原体に汚染される危険性を軽減する、単純な方法です。

 ケージや用品、食器などを pressure-washing する場合には、作業中に空気中に飛び散ったバクテリアを吸い込むのを防ぐために、防護マスクを使用した方が安全です。

6.爬虫類専用のプールやバスタブの使用

 爬虫類用に、間仕切り式のプールを購入しましょう。お望みなら、家に爬虫類専用のバスタブやシンクを造り付けるのも良いでしょう。しかし、家族にはそのシンクやバスタブを人間が使ってはならないと、しっかり言い聞かせておいて下さい。

 爬虫類用のプールやバスタブやシンクなどは、使用の度に漂白剤や、あなたの爬虫類を診てもらっている獣医師の勧める消毒薬を使って、しっかりと消毒しましょう。

 サルモネラ菌は水道水の中で89日間、池の水なら115日間、庭土の中では280日間、鳥の糞の中では28ヶ月間毒性を持ち続けます。その事を覚えておいて下さい。

7.サルモネラに感染すると危険な人

 乳幼児や小さな子供(10歳以下)、HIV陽性反応の出ている人、自己免疫病患者及び免疫抑制療法を受けている人(ステロイド剤を含む)は、爬虫類やそのケージに触れるべきではありません。

 細菌性の病気にかかっている疑いのある人は、爬虫類を避けてください。

 テストではサルモネラ菌を保有している爬虫類を必ずしも特定できるとは限りませんから、サルモネラに感染すると危険な人は爬虫類を避ける方が無難です。

 もし、10歳以下のお子さんが爬虫類に対して真剣に興味を持っている場合には、大人が動物のすぐそばで監督して、安全な扱い方や、爬虫類を触った後に手などを丁寧に洗うことを、指導するようお勧めします。

 このことは、サルモネラやその危険性を理解している大人の義務といえます。

8.可能ならば国内繁殖の爬虫類を飼いましょう

 国内繁殖の爬虫類を購入したからといって、その個体がより健康であるという保証はありませんが、野生採集の種に比べて寄生虫を媒介している可能性が低いといえます。寄生虫によって爬虫類は、サルモネラ症を含む細菌感染症に二次的に感染し易くなります。

 サルモネラは、国内繁殖の爬虫類からも見付かっていますが、一般的には同じ種でも、国内繁殖の方が野生採集個体より健康である場合が多いのです。

9.抗生物質を多用しない

 飼育している爬虫類達にやたら滅多と抗生剤を与えるのは、まずいやり方です。これを続けると、爬虫類はサルモネラを含む特定のバクテリアを持つようになり、またそのバクテリアは獣医師にも検出不可能となります。

 また、バクテリア自体に抗生物質に対する抵抗力ができますので、重大な細菌感染症が発生したときに、いつも使用している抗生物質が役に立たなくなってしまいます。

10.他のペットを爬虫類に近づけない

 爬虫類以外のペットが、爬虫類やそのケージ・水浴び用のプール・排泄物・食器などに触れることの無いようにして下さい。

 犬や猫は、爬虫類と遊んだり接触したりさせてはいけません。犬や猫が爬虫類に怪我をさせることは爬虫類にとっても危険ですし、爬虫類から他のペットに危険な細菌が移ることもあります。

11.飼育環境は掃除しやすくしましょう

 爬虫類の飼育環境は、掃除が簡単に出来るようにして下さい。可能なら、プラスチック製のシェルターや、殺菌消毒しやすい食器やプール等、ケージ内に置く物は、穴のあいておらず、角の丸い物にして下さい。

 床材は掃除・交換の容易な物を使用し、ケージ内の環境は、通気が良く湿度の調整がしやすいようにしましょう。ケージの掃除がしやすければしやすいほど、定期的なお手入れもしやすいものです。

12.爬虫類に詳しい獣医師との協力を

 ペット爬虫類の健康診断を定期的に行っていれば、飼い主と獣医師は、サルモネラを含む潜在的な病原菌を見極めることが出来ます。また、寄生虫の度合いも見極められます。

 テストは誰にでも出来るようなものではありませんが、もしもサルモネラが特定の爬虫類から検出されたら、少なくとも飼い主は、それが動物の体内に存在しているという事実に気付きます。

 A negative culture は、サルモネラがいないと言うことの証明にはなりませんが、繰り返し検査をすることが、保菌者を特定する上で、役に立つと分かるでしょう。

 一般的に、経験豊かで爬虫類に詳しい獣医師は、飼育している爬虫類を可能な限り健康に保つ助けとなりますので、飼い主の利益となるでしょう。


グリーンイグアナの血液検査データ